カーリース契約で交通事故が起きた場合の法律問題

交通事故が発生した場合,事故によって損害を受けた被害者としては,交通事故によって生じた車両等の損害については完全な回復を望むのが通常です。
しかしながら,交通事故における車両の損害額の評価(どの程度の損害が生じたか)には様々な考え方があり,交通事故でよく争いとなる問題の一つです。
本コラムでは,カーリース車で交通事故が生じた場合における法律問題について,解説します。

1 カーリース契約とは?

⑴ リース契約とは?

リース契約とは,リース会社が,顧客が希望するリース物件を販売会社(サプライヤー)から購入し,これを顧客に賃貸して,賃貸借期間(リース期間)中に顧客から賃料(リース料)を受領する契約のことをいいます。法的には動産賃貸借の一種と解されています。

リース契約は,①解約不能(ノンキャンセラブル),②フルペイアウト(借りている間に物の価値の大部分を支払う)の要素を含みます。
上記2つの要件が満たされている場合のリース契約を,「ファイナンスリース契約」といい,これが基本となります。

他方,上記要件のいずれかが欠けている契約を,オペレーティングリースといいます。カーリースは,まさに①中途解約(ノンキャンセラブル)ができないという要件は満たされているものの,②1年,3年,5年で解約(車両の返却)ができ,車両価格全額の支払いをしなくても良い(フルペイアウト)という要件が満たされていない点において,オペレーティングリース契約であるといえます。

⑵ リースのメリット・デメリット

メリット デメリット
初期費用を抑えられる 中途解約が不可
設備の入れ替えが自由 所有権がない
費用の均一化 リース手数料が発生する

リース契約は本来,事業の運営において,店舗の自動ドア・事業用機械などの設備として高額な動産を,初期費用を抑えて設置することが可能となる点にメリットがあります。
もっとも,上記のメリットは自動車にもあてはまるため,近年,新しい自動車の利用方法として活用されています。

⑶ カーリースの特徴

自動車を利用する方法は主に2つあります

  1. 直接の購入(一括購入・所有権留保付きのローン・残価設定ローン)
  2. レンタカー・カーシェアリング

カーリースは,Ⅱの要素にⅠの要素を合わせた性質を持ちます。
カーリースは,リース会社が用意した車両を,顧客が借りて使用するという点においてはファイナンスリース契約及びⅡレンタカーと同じです。

ただし,カーリースにおいては②フルペイアウトの要件がない場合が多く,契約内容によっては一定期間経過後,再度契約を行う,リース会社に引き取ってもらう,自動車を買い取ることを選択できるという点においてファイナンスリース契約とは異なります。
レンタカーとも異なり1年単位での契約が通常です。

カーリースはリース契約の性質である初期費用を抑えられる点,毎月の支払額が一定のため家計の経営を把握しやすい点,定期的に車両を乗り換えることが可能であるというメリットはリース契約と同様です。
これに加えて,純粋なリース契約と異なり,一定期間後,車をもらうこともでき,場合によっては車両の所有者となれるという点で,Ⅰの性質も併せ持ちます。

このようなカーリースでのメリットを享受しやすい立場の人としては

  • 初期費用を抑えたい・毎月固定で自動車を利用したい人
  • 転勤等により自動車が必要な時期と不用な期間にばらつきがある人
  • 自動車の利用を経費として計上したい人(法人・個人事業主)
  • 車検やメンテナンス・売却の事を考えるのが面倒な人
  • 様々な車に乗り換えたい人

にはカーリース契約が向いているといえます。

3 カーリース契約の車両で事故を起こした場合の注意点 

⑴ カーリース契約の特殊性

カーリースは,確かに月々のリース代を支払えば新車を乗ることができ,一見すると手軽のようなものに思えます。
昨今,所有の時代ではなく共有の時代ということもあって,現金一括にて車両を購入するという考え方のみではなくなっています。
しかしながら,手軽さと引き換えにデメリットも存在することに注意する必要があります。

カーリース契約は顧客が希望する車両をリース会社が購入し,それを借り受けるという性質の契約のため,借入期間を定めた後は,①その期間が満了するまでは中途解約ができません。
これは,顧客のためにリース物件を仕入れてきた会社の投資資本を回収しなければならないためです。

これは,リース会社が借主の代わりに車両を用意し,期間を決めて貸し出しを行っているため,その期間は,リース会社に対して車両を用意してくれた点に手数料を払わなければならないという契約になっているためです。
したがって,カーリース契約においては,カーリース契約の特殊性から,交通事故が起きた場合,以下のような法律問題が生じます。

⑵ 交通事故で車両が損傷した場合

カーリース契約にて使用している車両で交通事故を起こし,その車両が損傷した場合はどうなるでしょうか。

この場合,法律的には次のような状況になります。
カーリース契約において,車両の所有者はリース会社ですので,法律上は車両の所有者が車に関する権利を有しています。
そのため,交通事故加害者に対する車両の賠償請求や,修理費の請求は,通常であれば車両所有者のリース会社が行うことになります。

もっとも,リース契約では使用者にて修理を実施する旨の定めがなされていることが多いです。
そのため,借主でありながら,貸主(所有者)としての責任を負っている点で,リース契約は借主の負担が大きく,複雑な契約になっているといえます。

そのため,カーリース契約においては,事故が生じた場合,使用者が修理費を負担することになります。

⑶ 交通事故で車両が全損した場合

カーリース契約にて,車両が全損し(車両が修理困難なほど大破することをいいます),リース会社が用意した車両が廃車になってしまった場合,契約はどうなるでしょうか。
この場合,リース契約としては貸し出している車両が廃車となっているため,貸し出すものがなく,契約は終了となります。

しかしながら,先ほど述べたように,カーリース契約は中途解約ができないため,中途解約した場合は違約金を支払わなければならない場合が多いです。
したがって,カーリース契約の車両で交通事故を起こし,その自動車が全損した場合,現金で買った自動車がそのまま廃車となったのとは異なり,リース契約の手数料を支払う債務が残ってしまいます。

⑷ 加害者にリース契約の手数料を請求できるか

交通事故で車両が全損し,廃車となった場合,被害者としては,加害者に対して,使用していた車両と同程度の車両の買い替え費用と併せて,カーリース契約の違約金も賠償してほしいと考えるのが通常です。
この点について,裁判所は,カーリース契約の違約金を損害として加害者に請求できないとしています(神戸地裁平成4年8月21日判決)。
裁判所としては,違約金は通常予見し得ない損害であるといった理由や,リース契約が解除され,違約金が発生するのは交通事故による場合のみならず,その他の事情でも発生し得ることから,交通事故によって生じた損害であるとはいいきれないことを理由としています。
そのため,リース車両で事故を起こし,その車両が廃車になってしまった場合は,違約金については利用者の負担となってしまう可能性が高いことに注意が必要です。
ただ,現在ではカーリース車で事故が発生し,違約金も負担しなければならないという事態に備え,車両保険の金額を上げておくといった方法もあるようです。また,今後,カーリース契約がより一層普及していく場合には,予見し得る損害として賠償が認められる場合もあるかもしれません。

4 まとめ 

昨今,タイムズレンタカー等でスマホアプリからいつでも車をレンタルすることができるステーション型のレンタカーサービスが普及しており,自動車をローン(残価設定含む)で購入するだけが車の使用方法ではなくなりつつあります。
今後はそのようなシェア型のサービスが普及していくことが考えられます。
もっとも,その手軽さの代わりに,交通事故が生じた場合は,通常とは異なる法的な問題が生じることにも注意する必要があります。
法律問題は,このように身近な場所に潜んでおり,事前に知っておくことでも事前に対策することができることもあります。
交通事故に関する問題はこれ以外にも様々あり,専門的な知識が必要です。
少しでもお困りのことがあれば,お気軽に相談下さい。

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