死亡退職金は,賃金の後払いとしての性格や,遺族に対する生活保障としての性格などが混在したものと考えられています。
前者の性格を重視すると,死亡退職金は被相続人(亡くなった方)が生前に受け取るはずだった労働の対価であるとして,相続財産に含まれると考えることができます。
他方,後者の性格を重視すると,死亡退職金は被相続人が受け取ることを前提としていない遺族固有の財産であるとして,相続財産には含まれないと考えることができます。
このように,相続財産に含まれるか否かは一律に決まらず,個々の事案に応じて決すべきものとされています。
例えば,会社が定めた死亡退職金を受け取ることができる人の範囲や順位が,民法の定める相続人の範囲や順位と異なるときは,死亡退職金は遺族固有の権利であり相続財産には含まれないと考える方向に傾くとされています(実際上はこのような事案が多いと考えられます)。
そのため,まずは死亡退職金の支給規程や支給慣例等,会社が定めた死亡退職金に関するルールを確認することが重要です。
なお,被相続人が生前に退職したものの,退職金の支給を受ける前に死亡した場合,退職金請求権は相続財産になるものとされています。